大内宿の茅葺き屋根と塔のへつりの渓谷美を巡る、湯野上温泉の南会津旅
福島県南会津地方を代表する景勝地「塔のへつり」と「大内宿」。
渓谷沿いに奇岩群が連なる絶景や、茅葺き屋根の建物が並ぶ宿場町など、会津ならではの古い街並みと自然が広がる地域です。
今回は、2026年5月中旬にこれらを巡り、湯野上温泉の民宿に宿泊した「会津【大内宿・塔のへつり】湯野上温泉に泊まりながら巡る南会津旅」を紹介します。
全国4位の温泉地数を誇る福島県
全国4位の温泉地数を誇る福島県。
リゾートバイト生活で福島県にいる筆者としても、「福島って温泉が多い。」
そんな印象はありました。
ただ、都道府県別の温泉地数で全国4位になるほどとは思ってもいませんでしたね。
環境省温泉保護推進室では、1998年(平成10年)から温泉利用状況を調査しており、こちらが最新となる2024年度(令和6年度)の温泉利用状況です。
引用元:環境省公式サイト令和6年度温泉利用状況より抜粋
2023年度(令和5年度)版になりますが、一般社団法人日本温泉協会では、都道府県別の温泉データを分かりやすくまとめています。
引用元:一般社団法人日本温泉協会公式サイトより
別府温泉や由布院温泉で有名な大分県は、源泉総数は全国2位。
ただ、温泉地数ではベスト10圏外なんですね。
同じ「温泉県」でも、源泉数が多い県と、温泉地が各地に点在している県では、また違いがあるようです。
東京から会津若松へ、温泉地をつなぐ鉄道路線
温泉地を結ぶ、東京〜会津若松ルート。
東京・浅草から会津若松までを結ぶ、東武鉄道・野岩鉄道・会津鉄道・JR線。
このルートは、栃木県や福島県の温泉地を巡る際にも便利な鉄道路線です。
その移動を支えているのが、東武鉄道・野岩鉄道・会津鉄道へ直通運行する特急「リバティ会津」。
浅草駅から終点の会津田島駅までは約3時間12分。
さらに会津田島駅からはリレー号へ接続し、会津若松駅までは約4時間21分で到着します。

この路線図に並ぶ駅名を見ているだけでもワクワクしてきますが、実は栃木県内で5ヶ所、福島県内で2ヶ所、合計7ヶ所もの「温泉」が付く駅名が存在しています。
さらに終点の会津若松市には名湯・東山温泉もあり、まさに鉄道沿線に温泉地が点在する「温泉路線」。
特急リバティ会津とリレー号のネットワークを利用すれば、鬼怒川温泉から会津若松、さらにはその先の喜多方方面まで、乗り継ぎよくスムーズに移動することができます。
湯野上温泉
湯野上温泉は、福島県南会津郡下郷町にある温泉地。
湯野上温泉は、大川(阿賀川)の美しい渓谷沿いに温泉街が広がっており、古くから会津地方の「奥座敷」としても親しまれています。

実際に湯野上温泉の街を歩いてみると、草津温泉や城崎温泉のような「いかにも観光地化された温泉街」という雰囲気ではありませんでした。
どちらかというと、温泉宿が一般住宅のように自然に並ぶ、のどかな町並みです。

散策していても飲食店をほとんど見かけず、とにかく「宿」そのものの印象が強く残る街なのですが、歩いているうちに一つ、気になることが出てきました。
それは、並んでいる宿の多くが「民宿」と名乗っていることです。


遠くに見える青い看板の「大阪屋」さんだけが、この温泉街で唯一「ホテル」を名乗っていました。
それ以外は、見渡す限り「民宿」の文字が目立ちます。

筆者が驚いたのは、こちらのような立派な建物でも「民宿」となっていたこと。
正直、どう見ても旅館にしか見えません。

気になって地元の方に「なぜ湯野上温泉の宿は、みんな民宿と名乗っているんですか?」と尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきました。
「旅館だと敷居が高く感じられてしまうから、あえて親しみやすい『民宿』と言っているんだよ」
なるほどと思いましたが、初めて来た人は逆に「これで民宿なの?」と驚きそうですね。
また、温泉街の中には誰でも利用できる足湯もありました。

ちょっと浸かっていこうかと思ったのですが、この足湯がかなりの激熱!
筆者はとてもではありませんが熱すぎて浸かることができませんでした。
成分表を見てみると、湯温は56.5℃。
そりゃあ熱いですよね。

湯野上温泉のメイン道路名は「ほのぼの通り。」

お土産屋さんや飲食店が立ち並ぶ温泉街ではなく、静かな温泉宿が並ぶ通りを歩いていると、都会の喧騒を忘れられるような、名前通りの「ほのぼの」とした空気感がありました。
数百万年の歳月が削り出した奇岩の渓谷「塔のへつり」
長い年月をかけて浸食と風化を繰り返し形成された奇岩や絶壁が連なる、南会津の景勝地「塔のへつり」。
1943年(昭和18年)8月24日、国指定天然記念物に選定されています。
太平洋戦争中にもかかわらず天然記念物指定が行われていたことに、筆者は少し驚きました。

「へつり」とは方言で川に迫った断崖、急斜面の意味。
日本初の現代国語辞典「言海」によれば、「へつる」は「削る」と同語であり、絶壁や川岸などの険し路と解する例もあるそうです。
文字通り、川沿いの崖が激しく削り取られたこの地形にぴったりの言葉ですね。

渓谷には立派な吊り橋(藤見橋)が架けられており、対岸の「塔のへつり」へと実際に渡ることができます。
足元をを流れるエメラルドグリーンの川や、間近に迫る荒々しい岩肌を眺めながら、断崖沿いの散策を楽しむことができますよ。
茅葺き屋根の町並みが広がる「大内宿」
街道沿いに茅葺(かやぶき)き屋根の民家がずらりと並ぶ、南会津を代表する景勝地「大内宿」。
一歩足を踏み入れただけで、まるで江戸時代の宿場町へタイムスリップしたかのような美しい街並みが広がっています。

今でこそ日本の原風景として多くの観光客を魅了している大内宿ですが、実は昭和の中頃、一時は生活の近代化などによって茅葺きをやめ、トタン屋根への葺き替えが進んでいた時期がありました。
しかし、「この貴重な風景を後世に遺そう」と立ち上がった住民たちの熱心な保存活動が実を結び、1981年(昭和56年)には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。
一度はトタンで覆われた屋根が再び美しい茅葺きへと戻され、現在の奇跡的な景観が守られることとなったのです。

散策中、ちょうど茅葺きの葺き替え作業を行っている建物に遭遇しました。
こうして職人さんや住民の方々の努力によって、今もリアルタイムで維持されている背景を知ってから歩くと、目の前の景色の見え方も少し変わる気がしますね。
茅葺き屋根の駅 湯野上温泉駅
全国でも珍しい、見事な茅葺き屋根の駅舎を持つのが、会津鉄道の「湯野上温泉駅」。
1987年(昭和62年)、近くにある大内宿の街並みになぞらえて、現在の茅葺き駅舎となりました。

駅のすぐ脇には誰でも利用できる足湯が併設されているのも嬉しいポイント。
心地よい湯に浸かりながら、旅の疲れをゆっくりと癒やすことができます。

駅舎内には、いろりがあり、茅葺屋根の趣をより一層引き立ててくれます。

駅カフェも営業しており、コーヒーや甘酒、焼きおにぎり、チャーハンなどを駅構内やテイクアウトで楽しめます。
筆者は焼きおにぎりセット500円(税込)を、いろりを囲みながら頂きました。

大内宿へは湯野上温泉駅からバスが運行しており、温泉街へは徒歩約15分ほど。
塔のへつりへは、隣駅の「塔のへつり駅」からのアクセスとなります。

どこかホッとする味わいで、電車の待ち時間ものんびり過ごせます駅ですね。
民宿赤ひげ
今回、湯野上温泉で宿泊した宿は「温泉民宿赤ひげ」。

館内に入ると、NHK大河ドラマ「八重の桜」のポスターが飾られていました。
会津地方が舞台の作品ということもあり、こういうところにも“会津らしさ”を感じますね。

大きな宿ではありませんが、館内には贅沢な源泉かけ流しの湯船を完備。
のんびりと湯に浸かっていると、民宿ならではの素朴で落ち着く空気に心底癒やされます。

楽しみにしていた夕食は、会津名物の馬刺しや鮎の塩焼き、手作りハンバーク、鍋など品数も豊富。

鍋はつみれ鍋。

さらに後から焼き餃子も運ばれてきました。

女将さんは上海出身とのことで、上海料理のエビの卵白炒めも。

民宿の夕食で上海料理が出てくるとは思っていなかったので、ちょっと驚きました。
朝食はあっさりした和朝食。

温泉宿らしい朝ごはんで、ゆっくりした南会津の朝を過ごせました。
まとめ・感想
というわけで、今回は塔のへつりや大内宿を巡りながら、湯野上温泉に1泊してきました。
埼玉や東京に長く住んでいた筆者ですが、正直なところ湯野上温泉の存在は知りませんでした。
今回、オフの朝に「どこか1泊でのんびり温泉にでも浸かりたいな」と思い立って調べたところ、現在リゾートバイトで滞在している白河高原から車で約30分と意外にも近く、急遽行ってみることにしたのが始まりです。
実際に訪れてみると、茅葺き屋根が並ぶ大内宿、百万年の歳月が作り出した塔のへつり、そして静かな温泉街が広がる湯野上温泉など、南会津には都会の観光地とは違う、ゆったりした贅沢な時間が流れていました。
特に印象的だったのは、湯野上温泉の“民宿文化”です。
派手な温泉街ではありませんが、肩肘張らずに泊まれる温かい空気感があり、実際に宿泊した「温泉民宿 赤ひげ」でも、源泉かけ流しの温泉や美味しい手作り料理を楽しみながら、心からのんびり過ごすことができました。
また、会津鉄道の茅葺き駅舎や、温泉地を結ぶローカル線の存在も、このエリアならではの旅情をより一層引き立ててくれます。
有名観光地をせかせかと効率良く巡る旅というよりは、“温泉地でゆっくり過ごす時間”そのものを味わい尽くす。
そんな大人の贅沢を教えてくれる、最高の南会津旅でした。
おわり



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