【風のマジム】ページの先に広がる、南大東のラム酒アグリコール
原田マハの小説『風のマジム』は、沖縄・南大東島のサトウキビを題材にした物語。
サトウキビからラム酒を生み出そうとする女性の挑戦を描き、実話をもとにしたフィクションとして多くの読者を魅了してきました。
2025年9月公開の映画(公式サイト)も予定されており、作品への関心はますます高まっていますね。
筆者は小説の世界観と南大東で育まれた一杯の味わいを、本とグラスを通して堪能しました。

本記事では、文庫版を実際に読み込んだ感想に加え、モデルとなった実在のラム酒「CORCORアグリコール」もあわせて紹介します。
作品概要
『風のマジム』は、原田マハが2010年に単行本として発表し、のちに文庫化された小説。
沖縄・那覇で働く主人公・伊波まじむが、南大東島のサトウキビからラム酒を作るという夢に挑む姿を描いています。

まじむは社内ベンチャー制度に応募し、島の人々とともにラム酒づくりを進めていく中で、仕事の困難や人間関係に直面しながらも、挑戦を続ける姿が物語の軸となっています。
物語はフィクションですが、モデルとなったのは実際に南大東島でラム酒「CORCOR」を立ち上げた金城祐子氏の実話。
フィクションと現実が交わることで、読者は物語をより鮮やかに感じ取ることができます。
風のマジムを読んだ感想
主人公・伊波まじむの人間模様とサクセスストーリーはテンポよく、読みやすい作品でした。
筆者は2012年から2020年までの8年間、沖縄本島・読谷村に住んでいました。
そのため2010年に出版された単行本『風のマジム』や、モデルとなった南大東島のラム酒について耳にしていましたが、当時は実際に読むことも、ラム酒を味わうこともありませんでした。
今回、宮古島で文庫版『風のマジム』を手にしたのですが、これは大正解。
なぜなら作品の重要な要素である「サトウキビ畑と風」を、宮古島では日常的に感じられるからです。
この光景と重なり、作品の描く風景がより鮮やかに目に浮かびました。

作中では「ラム酒を風の酒」と呼んでいます。
サトウキビを大地と風が育てる。ラム酒はそのサトウキビから造られる。つまりは、風が育てた酒ーそれがラム酒なのだ
原田マハ著「風のマジム」より抜粋
読谷村にもサトウキビ畑はありましたが、そこで筆者が感じたのは作品のような「風」ではなく、「街の中に点在する畑」という印象でした。
一方で宮古島は街中こそ都会的ですが、少し離れると広いサトウキビ畑が広がり、海も近いため風を強く感じます。
作中の南大東島の描写も生き生きとしており、サトウキビ畑や島の空気が鮮やかに筆者の脳裏に浮かびました。


作中で完成したラム酒の名前は「風のマジム Island Deammer」。
マジムは主人公・伊波まじむの名前ですが、まじむとは沖縄の言葉で「真心」と言う意味。
主人公の名前でもありますが、「風と大地で育てられるサトウキビ」から造られる「風の酒ラム酒」。
そして主人公・伊波まじむとそのまわりの人たち全て「真心」から「風にマジム」となづけられたラム酒。
物語のサクセスストーリーとしての輝きや人間模様も印象的でしたが、筆者の心に深く残ったのは、南大東島の自然と、そこで生まれるラム酒でした。
CORCORアグリコール──南大東島で育まれる風の酒
風のマジムを読んでいる間に、どうしてもラム酒が呑みたくなり、モデルとなった実在の「株式会社グレイス・ラム」が造る CORCOR(コルコル)アグリコール を購入しました
CORCORは「CORAL CORONA(サンゴの冠)」の頭文字から名付けられた銘柄です。

サトウキビを原料とするラム酒には大きく2つのタイプがあります。
ひとつは「アンデュストリエル」。
「アンデュストリエル」とは製糖工場で砂糖(ざらめ)を精製する際に副産物として産出される「糖蜜」を発酵させて造ったラム酒。
もうひとつが「アグリコール」。
「アグリコール」とはサトウキビの新鮮な搾り汁のみを発酵・蒸留して造られるラム酒。
より素材そのものの香りや風味が活きるのが特徴です。

CORCOR アグリコールの原材料名にも、しっかり「サトウキビ搾り汁」と記されています。

作中では、沖縄のサトウキビから造られる美味しいラム酒を届けたい思いから「アグリコール」を選ぶ過程が描かれています。
主人公・伊波まじむにとって最も大切な人である祖母(おばぁ)が、いつも飲んでいたのも「アグリコールのロック」。
それにあやかり、筆者もロックで楽しんでいます。
ただ初見ということもあり、最初の一杯はストレートで。
サトウキビの搾り汁をそのまま発酵・蒸留して造られるスタイルのラム酒は、サトウキビそのものの香りや風味が強く表れ、フレッシュで個性的な味わい。

サトウキビそのものの香りや風味が強く表れ、青々とした草の香りが立ち、口に含むとサトウキビの甘みと島の風を思わせる軽快さが広がります。
アルコール度数は40%。スピリッツらしい力強さがあるため、その後は氷を浮かべたロックに切り替えました。

筆者の住まいの目の前にはサトウキビ畑が広がっています。
畑を眺めながらグラスを傾けると、まさに作品が語る「風の酒」を実感するひととき。
南大東島で描かれた物語が、宮古島の日常の景色と重なり合いました。

まとめ・感想
『風のマジム』を読みながら、実際にCORCORアグリコールを味わうことで、作品世界がより立体的に感じられました。
物語の中で語られる「風の酒」という言葉は、ただの比喩ではなく、実際にグラスの中で体感できるリアリティがあります。
主人公の挑戦や人間模様も印象的でしたが、筆者の心に深く残ったのは、南大東島の自然と、そこから生まれる一杯のラム酒でした。
『風のマジム』をきっかけに本と酒を組み合わせて味わう──そんな楽しみ方もまた、この作品ならではの醍醐味だと感じます。
おわり
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