香川県には「西野金陵株式会社」「綾菊酒造株式会社」「川鶴酒造株式会社」「有限会社丸尾本店」「小豆島酒造株式会社(森國酒造)」「勇心酒造株式会社」の6つの酒蔵があります。
それぞれが個性ある地酒を手がけるなか、筆者はこれまでにこんぴらさん表参道にある「金陵」を訪れ、資料館や有料試飲を楽しんできました。

今回は綾川町にある綾菊酒造株式会社へ足を延ばし、香川県限定流通の純米酒「國重(くにしげ)」を購入しました。

訪問時期は2025年5月上旬。現地での印象と、後日飲んでみた感想をもとにご紹介します。
國重シリーズ
香川県内のみで流通している「國重」シリーズは、綾菊酒造が手がける限定銘柄です。
綾菊酒造の銘柄としては「綾菊」が広く知られていますが、「國重」は正会員制度を通じた地元流通に限定されています。
店頭や蔵元、特定の販売店でしか入手できないため、県外ではなかなか見かけることがありません。
今回、筆者は2種類の國重を購入しました。

純米吟醸 國重

純米吟醸國重は契約栽培された香川県綾川町山田地区産のオオセトを100%使用。
精米歩合は50%としっかり磨かれています。

香りは控えめで、口に含むとまず酸味が立ち、その後に旨味とやさしい甘みがじんわりと広がります。
強めの辛味が後口を引き締め、飲み飽きしない仕上がりです。

冷やして飲むのがおすすめとされており、筆者もよく冷やしていただきました。
米の旨みが残りつつ、雑味のないすっきりとした飲み口で、暑い季節にも心地よい一杯です。

國重 槽(ふね)しぼり うすにごり
國重シリーズのなかでも、季節限定で出荷されるのが「槽しぼり うすにごり」です。
この1本は、綾川町山田産オオセトを使い、1仕込みタンク限定で造られた純米吟醸酒。

「槽(ふね)しぼり」とは、もろみを布袋に入れ、木槽に並べてゆっくり圧をかけて酒を搾る、伝統的かつ丁寧な製法です。
時間をかけてやさしく搾ることで、雑味が少なく、きめ細かい味わいに仕上がります。

「うすにごり」とは、ごく細かい澱(おり)がわずかに残った状態。
グラスに注ぐと、透明感のある酒にうっすらと霞がかかります。

味わいはすっきりした辛口をベースに、やわらかな旨みが重なり、うすにごりらしいやさしい口当たり。
清涼感のある飲み口で、春先や初夏にぴったりの限定酒です。

さぬきオリーブ酵母とは?
「さぬきオリーブ酵母」は、香川県が開発した日本酒用の清酒酵母で、オリーブの実や葉から分離・培養されたものです。
香川県酒造組合と県産業技術センターが2016年〜2018年にかけて開発し、その後、綾菊酒造・川鶴酒造・西野金陵・小豆島酒造の4蔵がこの酵母を使って地酒を仕込んでいます。
酵母に加え、米や水も香川県産で統一された“オール香川”の酒は、それぞれの蔵で異なる個性を見せています。
オリーブ酵母純米酒 飲み比べ
筆者は綾菊酒造・川鶴酒造・西野金陵のオリーブ酵母純米酒を購入し、それぞれを飲み比べてみました。

綾菊
パッションフルーツやライチを思わせるトロピカルな香りがふんわりと広がり、酸味は軽やか。
口当たりはやわらかく、すっきりとした飲み口です。

川鶴
マスカットやメロンのような果実香と、ややシャープな酸味。
あとからふわっと広がる旨みが印象的で、バランスのとれた味わいです。

金陵 オリーブ純米酒
穏やかなトロピカルフルーツ系の香りに、さっぱりとした酸味。
控えめな甘みとキレの良さがあり、冷やして飲むと特に爽やかに感じられました。

まとめ・感想
今回は綾菊酒造を訪ね、「國重」2種とオリーブ酵母の純米酒を楽しみました。
直売所ではスタッフの方が丁寧に説明してくださり、國重の特徴や酵母の話まで聞くことができて、満足のいく買い物となりました。
店内には、歴代総理大臣による「國酒」の色紙のレプリカも展示されています。
この「國酒」は、1980年に大平正芳首相(香川県出身)が「日本酒は國酒」と発言したことがきっかけで始まった取り組みで、以降歴代首相が色紙を揮毫してきたそうです。
大平総理の直筆と思われる色紙がこの蔵に残っていることも、香川らしいエピソードのひとつです。

ただ酒を買うだけではない、造り手の思いや地域とのつながりを感じる時間。
日本酒に興味のある方なら、綾菊酒造の直売所は一度立ち寄ってみる価値があると思います。
おわり
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