香住ガニ(紅ズワイガニ)で知られている兵庫県北部の香住町には、カニ目的で宿泊の際のカニ以外でも楽しめるスポットがあります。
一つは但馬で一番人気と言っても過言ではない日本酒【香住鶴】の酒蔵。
もう一つは 【高野山真言宗亀居山大乗寺】です。
2か所とも車で10分程度しか離れていないので、両方見学するにはとても便利でしょう。
香住鶴株式会社
お酒を飲まない方や日本酒はちょっとと言う方には全く興味がわかない場所でしょうが、香住と言えば「香住鶴でしょう」と言っても過言ではないくらいの但馬地方の随一の酒蔵です。
1725年(享保10年)操業の香住鶴株式会社は、ウエブサイトによるとこのように記載されています。
地元の食材である松葉ガニや魚介類、但馬牛等に合う旨い酒造りを目指して、全量を但馬流「生酛(きもと)造り」、「山廃仕込」で日本酒を醸造しています。
引用:香住鶴株式会社ウエブサイトより
日本各地の酒蔵は個性豊かで強い信念をもって酒造りを行っていますが、香住鶴は全量 「生酛(きもと)造り」、「山廃仕込」で酒造りを行っているところに、信念の強さを感じます。
香住鶴の直売店名は【福智屋】。
酒蔵と隣接しています。
通販で何でも購入できる現在、全国各地の日本酒を通販で購入し、楽しむことができます。
しかし直売店には、通販にはない良さがあります。
それは【直売店限定】です。
これだけは通販では購入できません。
「直売店限定」や「数量限定品」で最初に完売するのは通常は一升瓶で、数量限定の【酒談義】や【生酛純米大吟醸】の一升瓶はやはり完売していました。
「数量限定」・「超売店限定」かは分かりませんが、新種販売の案内があります。
ウエブサイトでは案内が見つからなかったので、直売店でないと分からない情報かも?
香住鶴の一般的な銘柄【但馬の自信】。
他に【快鮮冷酒】と【但馬の誇り】などがあります。
以前あった無料の試飲は現在は実施おらず、試飲は有料のみとなっており、また試飲できる日本酒も決まっています。
ただ公共機関では行くには難しい場所なので、試飲する人は少ないでしょうね。
いろんな種類を試すには、四合瓶や一升瓶を複数購入すると高額になるので、ミニボトルで飲み比べセットの購入も良いでしょう。
一升瓶価格が3千円以上する香住鶴を冠とした高級酒ももちろんあります。
しかし香住鶴株式会社の高級酒は直売店・福智屋の冠とした【福智屋】で、一升瓶は1万円以上の高級酒ばかりです。
流石にこのあたりは手がでないので、今回はこれを購入しよう
山廃純米原酒 兵庫北錦 720ml 税込2090円
謳い文句の「すっきりした辛口、きりっと締まった喉ごし」通り、辛口でもグイっと飲める純米酒でした。
筆者は香住鶴は辛口のイメージが強いので、お店の人に「軟水か硬水か」を尋ねると軟水との回答。
地元の人と飲んだ時に「軟水で辛口って珍しいね。」と話しをしたら、「香住鶴の酒蔵はもともと別の場所に有り、そこは硬水だった。現在の場所に移転し、そこは軟水。だから辛口を出すのに苦労されたらしいよ。」と教えてもらいました。
香住鶴では酒蔵見学ができますが、往訪した2021年10月現在は中止していました。
ただ酒蔵の一歩手前までは行けます。
酒蔵見学の再開目途は立っていませんが、直売店は市場にでていない商品があるので、自分用やお土産用としての購入目的で訪れるのに良いと思いますよ。
高野山真言宗亀居山【大乗寺 】
745年(天正17年)、行基菩薩が高野山真言宗大乗寺を開き、江戸中期の画家円山応挙やその一門の画家たちのふすま絵などがたくさんあり、別名「応挙寺」とも呼ばれています。
大乗寺の城のような見事な石垣の上に建っています。
行基は相当優秀でウィキペディアにはこう記載されています。
行基(ぎょうき/ぎょうぎ、天智天皇7年(668年) – 天平21年2月2日(749年2月23日)[)は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活動した日本の仏教僧。朝廷が寺や僧の行動を規定し、民衆へ仏教を直接布教することを禁止していた当時、その禁を破って行基集団を形成し、畿内(近畿)を中心に民衆や豪族など階層を問わず広く人々に仏教を説いた。併せて困窮者の救済や社会事業を指導した。
布施屋9所、道場や寺院を49院、溜池15窪、溝と堀9筋、架橋6所を各地に整備した。当初、朝廷から度々弾圧や禁圧を受けたが、民衆の圧倒的な支持を得、その力を結集して逆境を跳ね返した。
その後、大僧正(最高位である大僧正の位は行基が日本で最初)として聖武天皇により奈良の大仏(東大寺)造立の実質上の責任者として招聘された。
この功績により東大寺の「四聖」の一人に数えられている。日本地図を作成したとの伝承もある(行基図)。
引用:ウイキペディアより
僧侶だけど、政治家、土木建築家など多才な人だな。
しかも高レベル
大乗寺の客殿内部は1階は、十一面観世音菩薩が安置されている仏間を中心に13室あり、13室全てに円山応挙とその門弟によるふすま絵をはじめとした見事な障壁画が描かれています。
十一面観世音菩薩 、障壁画165画全てが国の重要文化財に指定されています。
開館時間は9:00~16:00で、内拝料は大人/800円(小人/500円(小学生))。
撮影はもちろんNGですが、スタッフの方に障壁画についてガイドをしてもらえ、拝観する価値は多いにあります。
薬師堂
大乗寺の薬師堂は西国薬師四十九霊場の28番霊場で、ちなみに29番霊場は隣の豊岡市城崎温泉にある温泉寺になります。
本堂
御朱印にも書かれている観世音菩薩が安置されている場所という意味の大悲殿。
行基自ら聖観世音菩薩立像を彫刻し、祀られたのが始まりの大乗寺。
こちらの本堂にはどのような観世音菩薩が安置されてるのでしょうか?見てみたいものです。
志賀直哉は大乗寺を「暗夜行路」の中で、「丸山応挙がいちばん多く描いていた。その子の応端、弟子で呉春、芦雪もあり、それぞれおもしろかった」と紹介しています。
志賀直哉は山手線の列車にはねられ、その養生のために温泉で湯治をするために、城崎温泉に来ていたので、大乗寺も往訪していたのでしょう。
余談ですが、志賀直哉著の「城の崎にて」を読んだことありますか?
はっきり言いましょう。
城崎温泉をめっちゃディスっていますよ~
与謝野寛・与謝野晶子夫婦も大乗寺を和歌にしています。
「羨まし 香住の寺の筆のあと 作者みずからたのしめるかな」(与謝野寛)
「いみじけれ みろくの世まで ほろぶなき 古き巨匠の丹青のあと」(与謝野晶子)
著名な作家や歌人が絶賛するだけあって、素人が見ても「素晴らしい障壁画」とわかる大乗寺でした。
感想・まとめ
日本酒の酒蔵【香住鶴】と歴史ある寺院【大乗寺】、そして近畿圏では唯一兵庫県但馬の香住港だけで水揚げされているベニズワイガニこと【香住ガニ】と小さな町にもかかわらず、楽しめる町です。
オスのズワイガニの解禁は11月6日~翌年3月20日、メスのズワイガニ(セコガニ)は11月6日~12月31日ですが、香住ガニは9月1日~~翌年5月末と長いです。
隣の城崎温泉みたいな華やかさはありませんが、冬の味覚の横綱カニシーズンから外れても、香住ガニこと紅ズワイガニを美味しく頂ける香住は、関西では人気の宿泊どころとなっています。
おわり
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