滋賀県大津市にある三井寺は、天台寺門宗の総本山で、正式名称は長等山園城寺(ながらさんおんじょうじ)。
歴史的建造物や重要文化財が点在する広大な敷地には、四季折々の美しい自然が調和しており、高台からはびわ湖を望むこともできます。
特に桜や紅葉の名所として知られ、多くの参拝者が訪れます。
筆者も参拝した石山寺とは、2024年4月下旬から3週間程度あお紅葉の競演と謳ったイベントがありました。
また、境内には古代から伝わる貴重な仏像や文化財が多数あり、歴史と文化に触れることができる特別な場所です。
今回は7月初旬に参拝した「三井寺」を紹介します。
では、お参りしよう
参拝ルート
境内案内板によると、40分コース(青色矢印)と90分コース(赤色矢印)があります。
筆者は90分コースで参拝しました。
駐車場(500円)及び電車でのアクセス
仁王門(山門)のすぐ目の前に有料駐車場があります。
駐車料金は500円/普通車1台。
公共交通機関では、京阪石山坂本線・ 三井寺駅より徒歩10分、 大津市役所前駅より徒歩12分。
JRでは、東海道本線(琵琶湖線)大津駅、JR湖西線大津京駅から京阪バスに乗換えし、三井寺で降車となります。
仁王門(重要文化財) 徳川家康寄進の山門
元々は、室町時代の1452年(宝徳4年)建立された常楽寺(滋賀県湖南市)にあった門。
豊臣秀吉によって伏見城に移築され、その後1601年(慶長6年)に徳川家康の寄進によって、三井寺に移築された山門で、重要文化財に指定されています。
門の両脇には1457年(康正)に政策された金剛力士像が安置されています。
入山料(600円)
仁王門(山門)横の料金所で、入山料600円を支払い入山します。
+200円で指定文化財収蔵庫にも入館できます。
筆者は指定文化財収蔵庫も入館できる特別拝観券800円で入山しました。
御朱印(全14体)
三井寺では6ヶ所の御朱印所全14体の御朱印がいただけます。
また、ご詠歌は2歌いただけます。
釈迦堂(御朱印所・重要文化財)
清涼寺式釈迦如来像を本尊とする釈迦堂。
もともとは食堂(じきどう)にようで、室町時代の建築物で、重要文化財となっています。
釈迦堂では御朱印3体いただくことができ、筆者はご本尊の釈迦如来と大友皇子2体いただきました。
もう1体は子供の守り神・鬼子母善神の御朱印です。
鐘楼(御朱印所・重要文化財) 近江八景、日本三名鐘の一つ
本殿にお参りする前にまずは鐘を打ちます。
鐘は鰐口と同じく仏様へのご挨拶なので、打つのであれば参拝前になります。
1602年(慶長7年)建立の鐘楼は、近江八景の一つ「三井の晩鐘」で、重要文化財。
また日本三名鐘「音の三井寺、形の平等院(京都)、銘の神護寺(京都)」として数えられています。
鐘楼は寺によって、「打てる打てない」「有料無料」とあります。
三井寺の鐘楼は、有料で御朱印1体と鐘の由来書と合わせて1打800円。
受付は鐘楼横の納経所で行っています。
金堂 (御朱印所・国宝) 国宝 天台寺門宗総本山総本堂
天智天皇ゆかりの寺として7世紀に創建。
平安、鎌倉時代を通じて、源平合戦や南北朝の動乱により再建を繰り返し、現在の建物は豊臣秀吉の正室北政所によって、1599年(慶長4年)に再建され、国宝に指定されています。
金堂の本尊は秘仏の弥勒仏は秘仏として、で1300年以上安置されています。
秘仏は絶対見れないのですが、それ以外にも仏像が多数あり、千手観音立像や不動明王坐王像などの文化財仏像は見れます。
もちろん堂内は写真NGです。
金堂前にある灯篭は、天智天皇が大化の改新で蘇我氏を滅ぼした罪障消滅のため、自ら左薬指を切り灯篭の台座下に納めたと伝えられています。
金堂では御朱印(弥勒佛、円空佛)2体が頂けます。
閼伽井屋(重要文化財) 天智・天武・持統の三天皇の産湯
閼伽(あか)とは仏に供える水のことで、この泉は天智・天武・持統の三天皇の産湯に用いられたと言われる三井の霊泉。
この霊泉の履屋として閼伽井屋(あかいや)が1600年(慶長5年)に建てられました。
閼伽井屋の横には、日本最古の庭園の閼伽井石庭があります。
熊野権現社 開祖智証大師円珍勧請の社
天台寺門宗開祖である智証大師円珍の熊野三山への入峰錬行の事跡に則り、1160年(平治元年)に三井修験道の鎮守神として熊野権現を勧請。
現社は1837年(天保8年)に再建されたものです。
弁慶の引摺り鐘(重要文化財)三井寺の歴史の象徴
霊鐘堂には、「弁慶の引摺り鐘」よばれる奈良時代製作の重要文化財が安置されています。
この鐘は、幾度なく災厄をこうむってきた三井寺の歴史の象徴の一つ。
比叡山との争いにより武蔵坊弁慶が、三井寺から奪って比叡山へ引き摺り上げたと言う説話で知られ、「弁慶の引摺り鐘」と呼ばれています。
弁慶が撞いてみると、「イノー、イノー」と響いたので、弁慶が「そんなに三井寺に帰りたいのか」と言って谷底へ投げ捨てたといわれています。
その際にできた「ひび」や「引き摺った跡」が鐘に残っています。
他に霊鐘堂には「弁慶の汁鍋」と呼ばれる弁慶が所持していた大鍋があります。
江戸時代の観光ガイドブック「近江名所図鑑」に紹介されており、汁鍋より江戸時代に観光ガイドブックが存在していた事の方が筆者にささりましたw
一切経蔵(重要文化財) 毛利輝元寄進の三井寺唯一の禅宗様建築
もともとは山口県国清寺(現在の洞春寺)の経蔵で、1602年(慶長7年)に毛利輝元によって移築、寄進されました。
唐院(重要文化財) 三井寺で最も清浄な場所
三井寺の開祖・智証大師円珍の廟所として最も神聖な場所。
智証大師円珍が入唐して858年8天安2年)、請来した経巻・法具類を868年(貞観10年)に納め、伝法道場が始まりです。
唐院の建物のうち、大師堂と唐門(ともに重要文化財)は潅頂堂と長日護摩堂の後ろにあり、外観を見ることもほとんどできません。
三重塔(重要文化財) 徳川家康寄進の仏塔
1601年(慶長6年)徳川家康寄進の仏塔で、奈良県吉野の比蘇寺(現在の世尊寺)の東塔を豊臣秀吉が伏見城に移築していたものを三井寺に再移築した塔です。
四脚門 1624年(寛永元年)建立
四脚門は唐院の表門で、奥へ潅頂堂、唐門大師堂と一直線に並んでいます。
潅頂堂(重要文化財) 寺院の密教を伝承する道場
潅頂堂(かんじょうどう)は大師が唐からもたらした経典・法具類を納めるのに清和天皇から御所の仁寿殿(じじゅうでん)を下賜(かし)され、伝法潅頂の道場としたことが、名称の由来とされています。
現在の潅頂堂は、慶長年間に大師堂の拝殿として、また密教の仰木を伝える伝法潅頂の道場として再建されたものです。
潅頂堂の後ろに見えるのが大師堂(重要文化財)は、1598年(慶長3年)の再建で、国宝・智証大師像2躯と重要文化財・黄不動尊立像が安置されています。
大師堂の正面に建つ唐門も、重要文化財に指定されており、大師堂再建と同時に建築されました。
長日護摩堂(滋賀県有形文化財) 後水尾天皇祈願によって建立
長日護摩堂は、潅頂堂とつながっている建物。
後水尾天皇(在位1611~29年)の祈願によって建立されたと考えられています。
村雨橋
智証大師が村雨橋を渡っている時、中国の青龍寺が火災にあっているとさとる。
閼伽井の水撒くと、橋の下から村雨が湧き起こり中国に向かうと、翌年、青龍寺から鎮火のお礼の使者が来たと伝えられています。
微妙寺(御朱印所) 湖国十一面観音霊場第一番札所
微妙寺 位置
994年(正暦5年)建立された三井寺五別所の一つで、湖国十一面観音霊場第一番札所。
ご本尊の平安初期に製作された十一面観音は重要文化財に指定されています。
御朱印はご本尊の十一面観音、日本三不動のひとつ黄不動尊(金色不動明王)などがいただけます。
力軒 90分参拝コース中間点にある茶店
三井寺の観音堂までの途中にあり、90分参拝コースのほぼ中間点にある茶店。
名物三井寺辨慶力餅が美味しいと評判の茶店。
筆者は力餅が添えてある抹茶かき氷で、暑さと疲れを癒しました。
三井寺文化財収蔵庫
智証大師生誕1200年の記念事業として、2014年(平成26年)10月に開館。
入山する際に受付で入山料600円に+200円を支払えば入館できます。
受付時では入館予定していなくても、おそらく施設内で料金を支払えば入館できると思いますが、料金設定など未確認です。
筆者は入館したのですが、見ごたえがあり+200円なら、入館して満足しました。
また暑い日だったので、涼むこともできましたしねw
毘沙門堂(重要文化財) 極彩色に荘厳された優美な建築
1616年(元和2年)、三井寺の別所の一つ尾歳寺の南勝坊境内に建立されたものを、1909年(明治42年)に三井寺南院へ、その後1956年(昭和31年)の解体修理にともない現在地へ移築された堂宇です。
十八明神社 「ねずみの宮さん」で親しまれている三井寺の守護神
十八明神は三井寺を守護する神様で、別名は「ねずみのお宮さん」。
太平記によると、三井寺の頼豪阿闍梨という高僧が得た戒壇道場建立の勅許を、比叡山の強い訴えにより取り消し。
これに怒った頼豪阿闍梨は、二十一日間の護摩をたき壇上で亡くなります。
その強念が八万四千匹のねずみとなり比叡山へ押し寄せ、堂塔や仏像経巻を喰い荒らしたと伝えらています。
現在の建物1836年(天保7年)に再建され、比叡山の方向を向いて建っていいます。
観音堂(御朱印所)・西国三十三所観音霊場十四番札所
近畿2府4県と岐阜県にまたがる西国三十三所観音霊場は日本最古の巡礼と言われ、三井寺観音堂は十四番札所。
もとは聖願寺とも正法寺とも呼ばれ、現在地よりもはるか山上の華の谷というところにありましたが、1481年(文明13年) 移されました。
登るには道が険しく、また女人結界のだった華の谷から現在位置に移築されたことで、多くの人に参拝されるようになりました。
観月舞台(重要文化財) 桜の向こうには琵琶湖と大津の町
観月(かんげつ)舞台の奥には桜の木々。
その向こうにはびわ湖と大津の街並みが眼下に広がっています。
桜の時期は特別に開放してるようです。
百体観音堂(重要文化財) 西国、坂東、秩父の百観音様が遷座
西国三十三、坂東三十三、秩父三十四の百観音様が遷座されている堂宇。
観音堂(御朱印所・重要文化財) 33年ごとに開扉される秘仏が安置
本堂である観音堂には、重要文化財であるご本尊・如意輪観音(平安時代)は33年ごとに開扉される秘仏が安置されています。
御朱印はご本尊の観音様の別名・大慈悲
ご詠歌「いで入るや 波間の月を 三井寺の 鐘のひびきに あくる湖」
絵馬堂(重要文化財)
絵馬堂は建物内部に巨大な絵馬が納められている建物。
かつては参拝者に温かいお茶をふるまう接待施設としても使われていたそうです。
絵馬堂からの景観はびわ湖。
接待するのにふさわしい景観でしょう。
水観寺(御朱印所) 西国薬師霊場四十八番札所
西国薬師霊場四十八番札所である水観寺は、三井寺五別所の一つ。
藤原頼通の帰依(きえ)を受け、宇治平等院の初代執印を務めた高僧明尊大僧正によって、創建された寺院です。
御朱印はご本尊の薬師如来意味する醫王殿(いおうでん)。
他に福徳自在の三井寺招福尊の御朱印3体があります。
ご詠歌「なむやくし しょびょうなかれと ねがいつつ るりのくすりを あたえたまう」
護法善神堂 子供の守り神・鬼子母神が祀ってある
護法善神堂は三井寺の鎮守社の一つで、重要文化財の護法善神像を祀っています。
護法善神は鬼子母神として信仰され、足利尊氏の時代より続く「千団子祭り」は、子供の成長や安産を祈る祭礼として、毎年5月に開かれています。
まとめ・感想
桜の木が多いので春は大勢の人がいるのでしょうが、7月の平日という事もあって、人が少なくじっくり参拝することができました。
参拝コースは90分ですが、三井寺は重要文化財だらけなので、筆者の場合は3時間ぐらいかけて参拝しました。
また御朱印が多いので、現金は十分に用意する必要があります。
今は仲良しですが(多分w)、平安末期に三井寺(天台宗寺門派)は延暦寺(天台宗山門派)と分かれて以来抗争の他、源平合戦や南北朝時代などの天皇家や公家、豪族や武士たちの権力争いに翻弄され、焼き討ちや財産没収などに何度もあいながら復活している寺院。
そのことから不死鳥の寺とも呼ばれています。
苦難を乗り越えてきた三井寺を参拝で、筆者も力が湧いてきた感覚になりました。
おわり
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