比叡山延暦寺と言えば、「804年(延暦23年)、最澄(伝教大師)と空海(弘法大師)が遣唐使として仏教を学び、それぞれ比叡山延暦寺と高野山金剛峰寺を開いた」、「織田信長の延暦寺焼き討ち」で、日本史の教科書にもでてくる歴史ある寺院。
伝教大師最澄の比叡山延暦寺は「古都京都の文化財」、弘法大師空海の高野山金剛峰寺は「紀伊山地の霊場と参詣道」と、ともに世界文化遺産に指定されており、日本だけでなく世界的にも重要な文化財と言えます。
筆者はその内、京都平等院鳳凰堂、宇治上神社、高野山金剛峰寺をは参拝しましたが、比叡山延暦寺は未経験でした。
今回は5月中旬に比叡山延暦寺を参拝したレビュー記事となります。
ただ残念なことに、延暦寺第一の仏堂・根本中堂(国宝)は回廊保存修理工事中(期間は2023年8月2日~2024年11月15日)で、外観は全く見ることができましたね。
では、お参りしよう
比叡山延暦寺は滋賀県?京都府?
筆者は延暦寺は滋賀県と認識していた為、世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産に含まれた当初、少し違和感がありました。
また比叡山は県境をまたぎますが、比叡山延暦寺の住所は滋賀県大津市です。
延暦寺は平安京の鬼門である北東に位置し、鬼門除けの役割を持つとされています。
最澄が延暦寺を建立した788年(延歴7年)の6年後の794年に、桓武天皇によって都を京都平安京に遷都されました。
最澄は桓武天皇からの信頼を得ており、国費で専属通訳を連れて1年で還って来られる還学生(げんがくしょう)という立場で、遣唐使の一員として唐に渡っています。
諸説いろいろとあるでしょうが、比叡山延暦寺(最澄)と都は深い関係があるのでしょう。
いろんな経緯から世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産に含まれるのも理解できますが、「延暦寺って京都にあるんでしょう。」って言う人も一定数いるので、その辺に違和感を感じますね。
「古都京都」だけでなく、滋賀県も加えて「古都京都及び滋賀」の方が筆者としてはしっくりきます。
比叡山から二つの県庁所在地を望む絶景ポイント
県庁所在地である滋賀県大津市と京都市は、実はめちゃくちゃ近く、JR東海道線(JR琵琶湖線)で2駅(京都ー山科ー大津)約10分で移動できます。
電車では近いのですが、何となく遠くに感じるのは、県境が山だからでしょうね。
その県境となっている山の一つ比叡山は標高848m。
二つの県庁所在地「京都府京都市」と「滋賀県大津市」の両方を望むことができます。
比叡山参拝・観光時間目安は3~6時間
比叡山には「延暦寺」と言う建造物はなく、比叡山の山内にある1700ヘクタールの境内地に点在する約100ほどの堂宇の総称のことです。
従って比叡山はとても広く、アクセス方法と内容にもよりますが、参拝及び観光時間の目安は3~6時間と言われています。
比叡山延暦寺の参拝エリアは比叡山山内の東塔・西塔・横川(よかわ)と比叡山麓の坂本エリアの4エリアに分かれています。
筆者は車でアクセスし参拝しましたが、拝観時間内(9:00~16:00 西塔、横川は冬季9:30~16:00)に全てを参拝できず、2日間となりました。
比叡山山内の3エリアの堂宇を参拝するには、「諸堂巡拝券」1,000円が必要です。
また参拝目的でなく、ハイキングやドライブでも楽しめるのが比叡山。
山頂には鷹狙いで撮影する人や、比叡山麓から登山でくる人など、参拝以外の人も大勢いました。
また。ところどころに絶景ポイントがあるドライブウエイ(有料)では、山を通り抜けるドライブも楽しめます。
比叡山へのアクセス方法
比叡山延暦寺へのアクセス方法は公共機関、車、徒歩の3種類あり、車も有料道路(比叡ドライブウエイ、奥比叡ドライブウエイ)利用の為、徒歩以外はそれなりに費用がかかります。
公共機関でのアクセスルート「京都・八瀬ルート」「びわ湖・坂本ルート」「京都駅ルート」「おごと温泉駅ルート」の4ルートがあります。
車でのアクセスルートは南側の「比叡ドライブウエイ」、北側の「億比叡ドライブウエイ」の2ルートがあります。
公共機関/ケーブルカー・ロープウエイ
ケーブルカー・ロープウエイを利用するアクセスルートは「京都・八瀬ルート」「びわ湖・坂本ルート」となります。
京都・八瀬ルート
叡山ケーブル・叡山ロープウエイを乗り継いで、比叡山頂駅へ行くルート。
叡山ケーブル八瀬駅へは、京都市内から比叡電車で八瀬比叡山口駅へ行きます。
比叡山山頂から移動は有料シャトルバスもしくは徒歩になります。
叡山ケーブル・八瀬駅⇔ケーブル比叡駅
所要時間:約9分
運賃:大人片道550円/往復1,100円
小人片道270円/往復540円
運転時間:始発 9:00
最終18:15
運転間隔:平日30分毎、土日祝15分毎
叡山ロープウエイ・ロープ比叡駅⇔比叡山頂駅
所要時間:約3分
運賃:大人片道350円、往復700円
小人片道180円、往復360円
運転時間:始発 9:15
最終18:00
運転間隔:平日15分毎、土日祝15分毎
びわ湖・坂本ルート
日本一長いケーブルカー(営業距離は約2km)でケーブル坂本駅⇔ケーブル延暦寺駅を結ぶルート。
ケーブル坂本駅へは、JR湖西線比叡山坂本駅から徒歩約18分、京阪電車石坂線坂本比叡山口駅から徒歩約10分。
また連絡バス(有料)でも行けます。
またケーブル延暦寺駅から延暦寺根本中堂までは徒歩約7分と便利な上、車窓からは眼下にびわ湖の景色を一望できるので、人気のケーブルカーです。
坂本ケーブル・ケーブル坂本駅⇔ケーブル延暦寺駅
所要時間:約11分
運賃:大人片道870円/往復1,660円
小人片道440円/往復8300円
運転時間:始発 8:00(冬季8:30)
最終17:30(冬季17:00)
運転間隔:30分毎
公共機関/バス
バスを利用するアクセスルートは、「京都駅ルート(比叡ドライブバス)」「おごと温泉駅ルート(奥比叡ドライブバス)」になります。
シャトルバスは「比叡山頂駅⇔東塔⇔延暦寺バスセンター⇔西塔⇔横川」間を運転しています。
時刻表は平日/土日祝、夏季/冬季などで時刻表が変わるので、注意が必要です。
写真は2024年3月20日~12月8日の時刻表になります。
車
車は必ず南側「比叡ドライブウエイ田の谷峠ゲート」もしくは北側「奥比叡ドライブウエイ仰木ゲート」からの出入りとなります。
運営会社が異なる為、山頂付近でドライブウエイが変わりが、ドライブウエイは繋がっています。
田の谷峠ゲート、仰木ゲートの他に各ドライブウエイの途中に検札所にがあり、UターンもOKです。
比叡山ドライブウェイ→奥比叡ドライブウエイ
奥比叡ドライブウエイ→比叡山ドライブウェイ
通行料の精算は「田の谷峠ゲート」もしくは「仰木ゲート」で行います。
比叡山山内3エリアを巡拝する場合、Uターンより「田の谷峠ゲート⇔仰木ゲート縦通(全通)」の方が安いので、縦通をお勧めします。
るり堂:織田信長の比叡山焼き討ちを逃れた唯一のお堂
西塔から徒歩で行ける「るり堂」は、田信長の焼き討ちを逃れたという唯一のお堂。
建立は室町時代末期と推定されています。
るり堂にあった本尊は薬師瑠璃光如来像。
現在は東塔にある国宝殿(有料)に安置されています。
るり堂へのアクセスは非常に分かり難いので、こちらのページを参照してください。
頂いたは御朱印は全19体
比叡山延暦寺は東塔、西塔、横川、坂本の4エリアにまたがっており、御朱印マップを元に御朱印巡りをしましました。
御朱印マップに記載されていないお堂もあり、全ての御朱印頂くのに二日間かかりました。
東塔エリア
東塔は伝教大師最澄が延暦寺を開いた場所で、本堂にあたる根本中堂を中心としたエリア。
東塔は延暦寺本堂かつ天台宗総本堂である根本中堂の他、宗祖を祀っている大講堂、先祖回向のお堂である阿弥陀堂など重要な堂宇などが集まる比叡山内の最大の巡拝エリアです。
御朱印が頂ける堂宇は全9堂宇で、御朱印所は3ヶ所あります。
御朱印は、直接御朱印帳に書いもらえる堂宇と一枚書きの堂宇に分かれます。
1.根本中堂(国宝)
天台宗の宗祖伝教大師最澄が788年(延暦7年)に創建した延暦寺第一の仏堂。
内陣には最澄の手による秘仏・薬師如来像が祀られています。
現在の建物は徳川3代将軍家光によって、1642年(寛永19年)に再建されたものです。
2.星峯稲荷
延暦の昔荼枳尼天が、白雪の神狐の姿で星の峯に来られ、諸人の罪や穢れをはらい、福徳を施したとたと言われています。
それ以来、公家宗の信仰が篤く、祈願の霊験があらたかであると伝わっています。
御朱印は根本中堂前の朱印所で、1枚書きのみで対応。
3.大講堂(重要文化財)
学問修行の場である比叡山の特徴を表す象徴的な仏堂です。
4年に一度行われる「法華大会広学竪義(ほっけだいえこうがくりゅうぎ)」をはじめ、経典の論議や法会などが行われる道場。
根本中堂とともに復興されましたが、1956年(昭和31年)の火災で焼失した為、麓のお堂を移築して現在に至っています。
4.大黒堂
伝教大師最澄が比叡山へ登った折、この地において大黒天を感見したところであり、日本の大黒天信仰の発祥の地と言われており、ご本尊に大黒天、毘沙門天、辨財天の三つの顔を持つ三面大黒天が祀られています。
この大黒様は別名を出世大黒天ともいわれており、財福や商売繁盛のご利益があります。
5.萬拝堂
日本全国の神社仏閣の諸仏諸菩薩諸天善神を勧請し、合わせて世界に遍満する神々をも共に迎えて奉安して、日夜平和と人類の平安を祈願している平成の新堂。
隣接して、参拝者のための無料休憩所・一隅会館があります。
御朱印は大黒堂の朱印所で、1枚書きのみで対応
比叡山延暦寺で唯一撮影ができるお堂でもあります。
堂内には人間の煩悩を表す108の数珠玉があり、手で回しながら一周すると、煩悩が消えると言われています。
6.文殊楼(重要文化財)
延暦寺の山門にあたる建物。
根本中堂と同時期に建立された文殊廊は、寛永の復興であたって根本中堂、大講堂ともに復興されました。
しかし現在の建物は、1668年(寛文8年)に焼失した後すぐ再建されたものです。
御朱印は大黒堂の朱印所で、1枚書きのみで対応。
7.正覚院
正覚院は、東塔東谷において「灌頂(かんじょう)」という天台密教における重要な儀式を行う道場でした。
現在はその地に延暦寺会館が建てられ、正覚院に祀られていた不動尊を延暦寺会館前に安置しています。
御朱印は延暦寺会館のフロントで、1枚書きで対応。
8.阿弥陀堂
先祖を供養する滅罪回向(めつざいえこう)のお堂である阿弥陀堂は、1937年(昭和12年)比叡山開創1150年を記念して建設されました。
阿弥陀堂前にある鐘楼は、国の重要文化財に指定されています。
9・法華総持院東塔
1980年(昭和55年)法華総寺院東塔は阿弥陀堂の横に再興されました。
本尊は大日如来をはじめとする五智如来が祀られており、塔の上層部には仏舎利と法華経が安置されています。
御朱印は阿弥陀堂の御朱印所で頂きます。
伝教大師最澄は日本全国に6か所の宝塔を建て、日本を護る計画をたて、その中心の役割をするのがこの東塔になります。
818年(弘仁9年)の『六所宝塔造願文』にその6カ所の記録があるそうです。
六所宝塔
安総:近江宝塔院(比叡山東塔院)
安中:山城宝塔院(比叡山西塔院)
安東:上の宝塔院(群馬/藤岡市浄法寺)
安南:豊前宝塔院(大分宇佐神宮)
安西:筑前宝塔院(福岡/大宰府竈門神社)
安北:下野宝塔院(栃木市/大慈寺)
西塔エリア
比叡山延暦寺西塔は第2世天台座主円澄上人によって開かれ、釈迦堂を中心としたエリア。
西塔エリアでは、御朱印が頂ける堂宇は全3堂宇で、釈迦堂の他は御朱印所案内図に記載されてないません。
御朱印所は釈迦堂のみになります。
1.釈迦堂(重要文化財)
西塔の中心となるお堂で、正式名称は転法輪堂。
本尊は伝教大師自作とされる釈迦如来像で、釈迦堂として親しまれています。
釈迦堂はもともとは大津の園城寺(三井寺)の弥勒堂(金堂)。
織田信長の比叡山焼き討ちの後、1595年(文禄4年)豊臣秀吉が移築し、現在に至ります。
2.浄土院(重要文化財)
伝教大師最澄の御廟の浄土院は、比叡山で最も清浄な聖域。
822年(弘仁13年)に入寂した伝教大師は、弟子の慈覚大師円仁によって、この地に埋葬されています。
3.箕渕弁財天
比叡山三弁天の一つ箕渕弁財天。(東塔の無動寺弁天堂(御朱印無し)、横川の箸塚弁財天(御朱印有り)
御朱印マップや普通の観光マップにも記載されていないだけでなく、詳しい説明がありません。(見当たらない?)
ただ御朱印があるのは何か深い歴史があると推察します。
横川エリア
第3世天台座主慈覚大師円仁によって開かれた横川エリア。
遣唐使船をモデルとした舞台造りの横川中堂が本堂です。
またおみくじ発祥の地としても知られています。
横川エリアでは、御朱印が頂ける堂宇は全4堂宇です。
1.横川中道
慈覚大師円仁が入唐求法(にゅうとうぐほう)の旅から帰国後の848年(嘉祥元年)に改築した横川の中心となる大堂。
創建以来何度か焼失していますが、本尊の観世音菩薩(重要文化財)が災禍をまぬがれ、現在の建物は1971年(昭和46年)の伝教大師1150年大遠忌を記念して復元された建物です。
2.恵心堂
藤原兼家が平安中期に慈慶恵大師良源のために建立したお堂。
日本浄土真宗発祥の地でもあります。
御朱印は横川中堂の朱印所で、1枚書きのみで対応。
3.四季講堂(元三大師堂)
元三大師信仰の中心拠点で、春夏秋冬に軽天の講義が行われていることから四季講堂と呼ばれています。
慈恵(元三)大師良源は山上の堂塔伽藍整備や学問興隆に努め、比叡山中興の祖と崇められ、またおみくじの創始者として知られています。
4.箸塚弁財天
観光マップには記載されていますが、箕渕弁財天同様御朱印マップには記載されていないだけでなく、詳しい説明がありません。(見当たらない?)
ただ御朱印があるのは何か深い歴史があると推察します。
御朱印は四季講堂の朱印所で対応。
坂本エリア
比叡山へ行くケーブルカーがあり、また神代の昔より比叡山の麓に鎮座する全国に約3800社ある日吉・日枝・山王神社の総本宮・日吉大社があるエリア。
グルメ処でもあり、多くの飲食店もあります。
御朱印は各寺院で頂けます。
1.滋賀院門跡
1615年(元和元年)京都の法勝寺が移築され、1655年(明暦元年)滋賀院の号を賜った。
1877年(明治10年)火災で全焼し、現建築は1879年(明治12年)延暦寺山上の4つの建物を移築し、1908年(明治41年)にも移築され建物が加わり、現在に至ります。
狩野派渡辺了慶作の襖絵や小堀遠州作の庭園など多くの見所があり、仏様以外の撮影がOKとなっています。
2.生源寺
伝教大師最澄が生まれた地で、後に寺が建てられ、生願寺と名づけられました。
3.律院
律院はかつては松禅院という比叡山・横川の総里坊であったとされています。
延暦寺の僧侶は山で生涯を過ごしていましたが、山の生活は非常に厳しく、江戸時代初期頃から高齢になると、天台座主に願い出て許可を得て里に住むことができました。
この山下住まいを「里坊」と言い、現在は54寺が残っています
律院の山号「比叡山」もそこからきているのでしょう。
まとめ・感想
っという感じで比叡山延暦寺を巡拝し、御朱印を19体頂きました。
今回は2日間かけて巡拝しましたが、じっくり巡拝しながら絶景を楽しむには、もっと時間が必要と感じました。
山内には絶景レストランもあり、食事を楽しむこともできるので、次回はトライしてみたいものです。
また延暦寺第一の仏堂根本中堂のある東塔エリアや比叡山麓の坂本エリアは賑やかですが、西塔エリア、横川エリアは人が少なく静寂で神聖な趣を感じました。
特に朝一番で訪れた横川エリアの杉に囲まれた参道では、涼しさも手伝って清々しい気分になりました。
巡拝に関して一つ注意事項があります。
巡拝券(1,000円)や御朱印初穂料(500円、律院は300円)、お賽銭など全て現金で、筆者のように御朱印を19体頂いた場合、御朱印だけで約1万円になります。
従って、現金の準備だけは怠らないようにしましょう。
おわり
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